オープンカフェに憧れて
田舎者なので、屋外で飯を食べるなんてのはもっぱらBBQまがいの家族同士の集まりでしかないわけで、最初から外でパスタを食べるなんてハイソなことなどまるでしたことがなかったわけだ。
そんな田舎者が高校卒業を機に外の世界に旅立ったわけだが、その先もやっぱり田舎だったので地元とそこまで大きな違いはない…どころか、立地的により田舎で一人暮らしをすることになってしまったため、ますます都会的な何かに憧れるようになったのはもう仕方のないことだと思う。
その中でも特に自分の中で体験したいもののひとつが「オープンカフェでパスタを食べる」だったのだが、これが叶ったのは19歳の秋の時だった。
ひょんなことから神戸に遊びに行くことになって、もしかすると神戸ならオープンカフェとかいうのがあるんちゃうん? 的な妄想を膨らませて提案などしてみたところ、それを受け入れてもらい、無事三宮のセンター街にあるおしゃれなお店でオープンカフェを味わうことができたのであった。
それからほぼ倍近い年月が経過し30代後半にもなれば、さすがにオープンカフェに思いを馳せることはなくなったものの、それでもまだまだ体験していないことが数多くある。
例えば、人生においてまだ回転しないお寿司を食べたことがないし、スターバックスカフェのソファーを占拠して勉強をしたこともないし、デートに遅刻してしまい、謝る彼女に「俺も今来たとこだよ」って言ったこともない。
まぁ地元は日本海側なんで高級魚介に困ることもなければ、スターバックスなど使わなくても、近所のガラガラなマクドナルドやコメダコーヒーでも似たようなことはできる。
車社会なのでデートに待ち合わせる必要もないので、無い物ねだりといえばそれまでなのだろう。
それでも、十代の終わりに体験したオープンカフェの居心地の良さは今でも心に残ってるし、あんな気持ちになりながら新鮮な心で日々を過ごせるなら、それはそれで一つの幸せの形なのかもしれないと、最近になって再び自分の中で「オープンカフェでパスタを食べたい」病が心の中に芽生えてきている。
嗚呼、オープンカフェ。都会の喧騒の中にありながらも一つの異世界。歳を取れば取るほどあの光景は歪みを増し、神の鎮座する聖地へと心の中で変貌を遂げていく。
と、いうわけで、誰か僕と一緒にオープンカフェで小粋な時間過ごしてくれたりなんかしませんかね?